元キュー植物園園長で、現在エデンプロジェクト科学部長のギリアン プランス卿、米国スミソニアン博物館「生命の百科事典」顧問のジェームス エドワーズ博士、兵庫県立人と自然の博物館長(元東京大学附属小石川植物園園長)の岩槻邦男博士の3名が2012年10月31日お立ち寄り下さいました。
プランス卿には4回お越しいただいており、アマゾンの熱帯雨林研究の第一人者として、また私が一年間学ばせて頂いたキュー植物園の園長として、そして世界 の注目する理想的な植物園であるエデンプロジェクト立ち上げの責任者として、私自身、プランツ卿を尊敬して参りました。そのような方に訪問いただきアイデ アをいただけることは、非常に有難いことです。卿は咲くやこの花館を訪問する度に、どのように進化しているかを見て回るのが楽しみだそうです。
館に入られて間もなくの、オオオニバスの栽培場所で75歳の卿の目は輝きました。クルジアーナ系のオオオニバスを見られて、「これの受粉について南米で研究していた」と懐かしそうに語られました。池の横に植栽されたサガリバナを見られて
卿「上手く栽培できていますね」
私「幸い当館では熱帯植物の栽培では最高の技術者が活躍しています」
卿「バーリントニア(サガリバナ)で有名なのは何という島でしたか?」
私「西表島です。夜咲きなのでエコツアーとしてナイトクルーズなども行い観光資源にもなっています」
卿「そう西表島でしたね。私はバーリントニアの研究も行いました」と熱く語られました。
ハイビスカスワールドでは以前職員がカウアイ島で野生のヒビスクス・ワイメアエの枝を入手、それを挿し木で増殖、今では沢山花をつけているのをご覧頂くと、「来年1月にハワイの研究所に行くのでここでも保護されていると話をしよう」と写真を2,3枚撮影されました。 当館では野生植物をある意味こだわりで集めてきたのも気に入ってもらっているようでした。
プチイングリッシュガーデンと役立つ広場にもご案内、 私「これらは新たに教育、楽しみの場として作りました」と進化ぶりをアピール。
卿「かつてニューヨーク植物園の副園長をしていたが、盛んに園芸を通して子供の教育を行いました。とても大切な仕事ですよ」 そしてプチイングリッシュガーデンでは 卿「私の家のガーデンくらいのサイズかな」とユーモアーで.。 私「だからプチと名づけ、公園の緑を借景に狭さを感じないようにして、雑草管理も十分できるように設計しました」とこだわりを話しました。 イングリッシュガーデンにはツマグロヒョウモンやキタテハが蜜を吸いに来てきて、 卿「蝶が沢山吸蜜に来ていますね」
「蝶の食草を植えたバタフライパラダイスを計画しています」と咲くやこの花館の目標と予定の話しました。「それは良いアイデアだ」と深くうなずかれていました。
ブドウの巨峰のような実を幹につけている美味しいジャボチカバに注目されている際に、「当館ではマンゴやドラゴンフルーツが実れば、入館者の皆さんに試食をして貰っています」と一言添えると、「エデンプロジェクトでも同じようなサービスをしていますよ」 と答えてくださいました。
屋外のデザートガーデンではキンシャチなどがよく育っているので、 「イギリスでも南部のエデンプロジェクトでもこのような栽培が可能ですか?」 とご質問をいただいたので、「コーンウオールはマイルドな気候なので、乾燥気味にすれば大丈夫でしょう」 と答えました。当館のキソウテンガイは一般公開の植物園では「ベルリン」の次ぐくらい立派に育っていますよと前に話されていましたが、自分たちのところでは育てにくいとのこと。卿はナミビアで現地の研究者しか知らない大群落を見た時の感激を伝えられていました。
高山植物室は1990年以来お気に入りで、青いケシが何時でも咲き、ギンケンソウも育ちと、野生植物好きの卿は楽しまれていました。英国王立園芸協会 (RHS)のウイズレーガーデンのガーデナー園長は、以前当館でレクチャーをして下さいましたが、その際にギンケンソウを当館では種子から十数年で咲かせ ているのを聞き、ガーデナー園長は1年で咲かせたと自慢げに、但し肥料漬けだったそうですが、卿にその話をすると「ガーデナー園長は優れたガーデナーだ」 と英国人の好きなユーモアーがまたまた飛び出ました。 二階回廊からの樹冠の風景、ホールの多目的機能にはいつものように感心されながら次にバックヤードに移動しました。1時間半ほどの余裕しかなく追われる ように、お茶の時間もなくて恐縮すると「私たちはお茶より植物の方が大切でごちそうなのを知っているだろうと」と、エデンプロジェクトでの再会を楽しみに お別れしました。 共通の舞台で仕事をする喜びや悩みを語りあえる機会をいただけたこと、今回プランス卿を招待された国際花と緑の博覧会記念協会の皆さまに感謝いたします。