植物園の大事な仕事の中には地味ではありますが、原種や園芸品種などの維持、自然を損なわない対策、そして重要な施設の 維持などがあります。 今年は高齢のため手放されたカトレアの園芸品種、フウラン、オモト等の提供がありました。3~4月かけて、関西電力の施設で、兵庫県宍粟市の花菖蒲園内に あった伝統園芸研究所の閉鎖にともない、荻巣樹徳氏が収集されたマンリョウ、ツワブキ、ギボウシ、カンアオイ、ホトトギス、セッコクそして四川省を中心と した野生植物のイカリソウ類、マホニア、ミスミソウ類などのコレクションを4トン車に4段積みで2台分も譲り受けました。その他にもサボテン類を趣味家か ら収集を続けていますし、原種を中心にランや、高山植物の収集にも力を入れています。
話は変わりますが、以前このコラムでも紹介したとおり、宝塚ガーデンフィールズが2013年12月をもって閉鎖という残念なことになり、日本植物園協会や 地元の緑化で活躍中のボランティアグループのメリーポピンズの会とともに、宝塚ガーデンフィールズ跡地を緑地として保存しようと、宝塚市長、市議、市担当 者にもご参加頂き、講演会を7月以降何度か持ちました。また敷地内にある植物園協会の創立総会記念に植樹された地中海地方原産のチャボトウジュロも当館に 移植予定です。
一方、8月には、当館にて日本植物園協会の新潟県立植物園、広島市植物公園、淡路景観園芸学校教授とナショナルコレク ションの立ち上げについて話し合いがあり、11月には兵庫県フラワーセンター、12月には京都府立植物園において日植協メンバー間で絶滅危惧植物とナショ ナルコレクションの扱いについて意見交換がされました。
絶滅危惧植物については各植物園で収集しており、2011年1月現在日本の絶滅危惧植物1690種中、1021 種(60.4%)が収集されています。2020年まで、75%を収集するのが目標です。収集するだけではなく、広島市植物公園のようにヤチシャジンの保護 に努め、自生地での増殖や草刈りなども行いフィールドで効果をあげられているケースや、大阪府花の文化園のように奈良県でヒメユリの調査や受粉作業を実行 の報告もありました。イギリスのナショナルコレクションは同国で栽培されている野生種、園芸種を保存、育成、増殖、記録をまとめる民間組織「プラントヘリ テッジ」により運営されています。保存を行う植物園、ナーセリー、個人などがコレクションホールダ―になり、一般に公開も行っています。その情報は毎年名 簿として発行されます。目標はこれの日本版作りです。
当館でも今まで自生地の保護団体や篤志家との交流などを検討をする機会は度々ありました。その例として、11月15日 に、奈良県桜井市で活躍中の「里山の山野草を守る会」の方15名と当館で情報交換など勉強会を行いました。スズランの南限であるほか、キンラン、ササユ リ、ヤマユリなど美しい花の豊富な場所でしたが、人手がはいらなくなり強い草に被われ、山野草が姿を消し始めたそうです。そこで、草刈りを始められ、定点 観測をされながら2008年以来約50名で山野草の保護活動をされているそうです。当館での栽培状況を見て貰ったり、増殖などをされる場合の要点などもお 話しさせていただきました。
当館では植物園らしい植物紹介、展示や催し物を常日頃から行っていますが、前述のように地道ですが大切な役割分担も行っています。