館長の部屋

クマガイソウ(台湾産)の行方

2014.02.14

毎年3月に、当館の高山植物室のシラカバの根元で、100輪以上の花を咲かせてくれた台湾のクマガイソウを泣く泣く抜き 取りました。一昨年頃から葉の展開や、花の咲き具合などに調子の悪さが感じられるようになりました。これは、ウイルスの前兆で、念の為、バックヤードで一 部保存することにしました。
クマガイソウはタケの地下茎のように横に伸びて広がり、台湾産の方が栽培が容易なので、何れは群落ができるだろうともう20年以上前に、3芽をシラカバの 根元に植付けました。歳月をかけて生長し、数年前に、広がり過ぎて用土部分からはみ出したので、全株を一度植え直ししました。日本産より赤みを帯びたやさ しい色合いの花は、それからも順調に群れ咲かせました。万が一を考慮して、向かい側のシラカバの下にも台湾のクマガイソウを植え付けていましたが、これも 同じ状態になってしまいました。

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 植物とウイルス、それは切り離せない関係で、当館ではランなどに鋏を使用する際は、栽培 スタッフには大変手間ですが、一株毎にバーナーの炎か薬品で鋏を消毒してもらって作業をしています。ナノメーター(1mの10億分の1)単位のウイルスは 電子顕微鏡でしか確認できません。見えないものほど怖いものですが、一方ではこれも大切な世界です。他の罹病株のウイルスの媒介はアブラムシが植物の師管 液を口針で吸う際や、植物の葉が触れ合うだけでもうつってしまうので、とても神経を使う世界です。自然界では、ウイルス罹病株でも、その種子はウイルスに は感染しないので、正常な健康体への道が開けています。

ゲッカビジンは、古くよりクローンで増殖され多くがウイルスに感染している罹病株と言われてきました。ウイルス検定は反応のよいアカザなどでもできます が、専門業者に行って貰うと2種のウイルスが見つかりました。ただ普段あまり症状がでないブラインド状態で販売もされています。当館ではウイルスのない新 しい系統を育てたりしています。植物につくウイルスは800種以上もあり、人には感染しないものの植物には不治の病で、その対応策は罹病株の迅速な処分し かなく・・・頭を痛めます。
ウイルス被害は植物界ではよくあることで、例えば、現在、ウメ輪紋ウイルスが各地で広がり、農林水産省は富田林、伊丹、宝塚、尼崎、川西の一部からウメ、モモ、アンズ、オウトウなどの持ち出しを禁じています。

 kumagaisou_a最初のクマガイソウの話に戻りますが、健全な小さな株からの再スタートとなります。当館のクマガイソウを楽しみにされている皆さまにはしばらくご期待に添えないことをお詫びいたします。
クマガイソウの話でこんなことを聞きました。徳島県の山奥で数年前に見た約200株のクマガイソウの群生が、翌年、その場所に行ってみると一株残らず、す べて無くなっていたそうです。どうも、採取されてしまったようで、地元の人たちは「大切にしていたのに・・・」と、大変さびしい思いをしています。この話 はクマガイソウに限ったことではなく、カタクリ、ササユリ、カンランなど枚挙に暇がありません。大変さびしく、心ない話です。

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