名誉館長の部屋

咲くやこの花館のバックヤード

2016.05.25

3月30日のオオオニバスのツイッターで「咲くやこの花館にバックヤードがあったのですね」というコメントをいただいていました。遅くなりましたが入館者の皆さんには陰になっている部分について簡単に紹介させてもらいます。

 植物園によってバックヤードが殆どないケースもありますが、近隣でいえば京都府立植物園、兵庫県立フラワーセンター、長居植物園、大阪府立花の文化園などそれぞれ規模は違うもののバックヤードを所有しています。当館のバックヤード(栽培棟)では入手しにくい植物を中心に栽培、開花時や特別展など出番になると皆さんの前に登場します。
日本をはじめ世界各地の植物園とそのバックヤードを見ていると必要な植物の借用、増殖株の譲渡など相互間での有機的な利用が可能になります。植物の入手は職員による世界各地での種子等の採取(ほとんどの植物園では休暇を利用しての個人の努力や負担によります)や研究者、趣味家、種苗業者などによります。
1株の植物でも履歴書がかけるほどで、名前(日本での名称、学名)、出生地、誕生時期、育ての親、性格、好みの栄養、耐寒耐暑性、季節による水の必要量などの一部は記録、多くは関係者の記憶に頼っています。栽培の方法は一通りではなく勘に頼ることもあり、一年間の詳細を文字にするには莫大な時間を要します。私は今年の3月まで10年以上、月刊誌『NHK趣味の園芸』のQAのコラムを担当させて貰っていました。月3、4種の種名調べ、植物紹介、栽培などの回答で約400種、指南書づくりには時間を要します。非公表の数字ですが当館での栽培植物は5500(品)種以上と種類数が年々増加してきました。種名のリストアップはできても近年のDNAによるAPG分類体系への分類の移行をはじめ品種名などの再確認などにも時間を割かねばなりません。多種類の栽培技術をペーパーに残すのは並大抵ではありません。

咲くやこの花館のバックヤード。ここで様々な植物を栽培しています。

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