2016.08.20
8月が開花シーズンのフニーバオバブ(Adansonia rubrostipa=A.fony)はマダガスカルの西部から南西部の海岸より分布、アフリカ側の乾燥した気候の影響を受けます。学名のアダンソニア・フニー(Adansonia fony)は1898年にフランス人H.E.Baillonにより付けられました。しかしこれは正式名ではなく裸名で、1995年アメリカのミゾーリ植物園のD.A.Baumが国際植物命名規約32条1項に基づき無効としました。その結果1910年にフランス人のH.L.JumelleとH.Perrier de la Bâthieが命名したアダンソニア・ルブロスティッパ(A.rubrostipa)の名を使うべきだと提唱しています。花博当時の立ち上げで乾燥地植物室を担当されていた近藤典生先生は、rubrostipa(赤い柄)の名前は雄しべ基部にある赤い雄芯筒を指しますが、この特徴はアダンソニア・ザー(A.za)やアダンソニア・マダガスカリエンシス(A.madagascariensis)にも見られるのであえてアダンソニア・フニー(A.fony)という現地での名称フニーを使われていました。
当館でもフニーバオバブの名前で親しまれてきたいきさつもあり、ルブロスティッパバオバブ(A.rubrostipa)の名を使用していません。アダンソニア・ザーといえば気になるのは乾燥地植物室に2株あり約5mに育っているザーバオバブです。花はフニーと同じで萼は赤紫色でらせん状にカールします。花弁は黄〜橙色、雄しべは黄色、雌しべは赤紫色ですがフニーの花弁は雄しべより短く、ザーではほぼ同じ長さなのが違います。また木肌が全く違います。分布地域はフニーに隣接しています。もうそろそろ咲いてもよいバオバブです。
さて、今年咲いたフニーバオバブをご覧になった皆様は気付かれたでしょうが、ある枝のある部分にかたまって蕾が付き次々と花が咲きました。よく見るとそのある部分の基部に針金が環状に食い込んでいるのです。これは偶然の結果ですが、カキ、モモ、ブドウ、ミカンなどの果樹園芸でよく行われる環状剥皮(ringing)や針金結縛処理(wire tightening)と同じような効果が出たのと考えられます。当館ではジャカランダ、トックリキワタなど花を沢山咲かせたい時に行う処理です。環状剥皮は幹や枝の表皮に切れ込みをいれ、外皮、内皮、形成層に傷をいれます。師管を切る事により根にまわる養分を一時的に止めて樹勢を弱らせ開花促進、落下防止、果樹では果実の肥大、糖分の増加と子孫を残す方へと導きます。これらの効果を一層増すのに針金結縛処理が役立ちます。