名誉館長の部屋

見えにくい世界2 可愛いウサギゴケ?

2016.09.05

「虫を食べる植物展」は9月10日までです。それ以降はフラワーホールの展示や食虫植物捕虫ライブ解説はなくなりますが、館内外5ヶ所で数十種もの食虫植物はご覧いただけます。高山植物室で栽培のウサギゴケは当館では人気者の食虫植物です。学名をウトリクラリア・サンダーソニ(Utricularia sandersonii)といい南アの湿地で水分の切れない岩の上などに見られます。ウトリクラリアは関西でも山の湿地にミミカキグサ(U.bifida)やムラサキミミカキグサ(U.ulginosa)などが生えています。ウサギゴケには白花と紫花の系統があります。高山植物室は夏涼しく、冬は寒くない温度差の少ない場所で、ほぼ一年中開花します。

ウサギゴケはニュージーランドで環境が合い雑草化、アメリカのオオバナイトタヌキモ(U.gibba)などウトリクラリア4種が国の有害植物協定(NZ national pest plant accord)により増殖、配布、販売が禁じられています。日本でもオオバナイトタヌキモは早急に栽培禁止にしないといけません。本種の小さな破片が水たまりに落ちただけでも他の水草を犠牲にして水面を被い尽くす恐ろしいものです。さて肝心の可愛らしい花を咲かせるウサギゴケですが、根元を持ち上げると根のあちこちに小さな白い捕虫袋がついています。水に浮かぶタヌキモと同じタヌキモ科で捕虫袋の円筒状の誘導路に水を貯めてネマトーダ(線虫)や珪藻(植物プランクトンの一部)がはいるのを待っています。入口に2本あるひげに触れると水とともに獲物を吸い込んでしまいます。種類にもよるでしょうが調査では30分の1秒の高速で閉じるそうです。あの愛らしいウサギゴケが見えないところで何を、と信じがたいですが、養分の少ない土地で長い年月をかけて獲得した進化と言えそうです。

清潔感溢れるウサギゴケ

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