イギリス海峡にある英領のガーンジー島の海岸には野生化した球根植物が生えています。それを見たイギリスの植物学者ウイリアム・ハーバートは1820年の『カーティスボタニカルマガジン』の中で学名をネリネ・サルニエンシス(Nerine sarniensis)と記載しました。「ネリネ」はギリシャ神話の「海の女神」で水夫や彼らの船を護ります。海岸に育つ植物には相応しいかやや皮肉めいた学名をつけました。南アの植物がイギリスで野生化したのは、 1659年オランダへ球根を運んでいた船がガーンジー島近くで難破、球根が箱ごと流され、海岸近くにばらまかれ上陸、増殖したと考えられています。そこでサルニエンシスはガーンジーリリーという英名を貰いました。因みに同島での2016年のガーンジーネリネフェスティバルは10月8日〜22日だそうです。緋色の花の本種を欧州では17世紀初頭より栽培していました。そして現在では園芸化が進み数百品種が見られます。そのイギリスに別種のピンクのネリネが南アより導入されました。1904年にネリネ・ボウデニィ(N.bowdenii)と名付けられマイナス15℃にも耐え一番丈夫なので一般化が進みました。ただ本種や園芸化されたネリネ・ウンデュラタ(N.undulata)は夏に生育、夏に休眠をするサルニエンシスとは生育パターンが違います。サルニエンシスの花色は赤、サーモンピンク、紫、白、ツートンカラーもあり、切り花、ブーケ、そして園芸植物としての魅力があります。
同じヒガンバナ科植物で中国原産のヒガンバナ(Lycoris)にはないやさしい色、そして輝きがあります。ダイヤモンドリリーやジュエルリリーと呼ばれる所以でしょう。ダイヤモンドリリーはリリーとは言えユリではありません。ウオーターリリー(スイレン)などと同様にリリーやローズは「花」の代名詞的に使われています。日本で野生化している中国原産のヒガンバナ(Lycoris radiata)と同じヒガンバナ科に属し、間違えられることがしばしばありますが、花のやさしさ、明るさ、お洒落感などで虜になられる方も少なくはありません。関西では通常10月下旬から11月初旬に咲きますが、今年はやや早く咲かすために、9月から高山植物栽培の冷房室で開花促進をさせています。なお「ダイヤモンドリリー&秋の山野草昄売会」は10月15日(土)、16日(日)に、第138回咲くや塾「ダイヤモンドリリーの魅力」は15日(土)13;30からダイヤモンドリリーの専門家、横山直樹氏により行なわれます。販売はダイヤモンドリリー、原種シクラメン、種々の山野草などで横山園芸、そして船坂農園の皆様によります。是非楽しい催し物にご参加をお待ちしております。