名誉館長の部屋

丈夫な蘭フウラン、富貴蘭

2016.10.30

_MG_8994今年の夏、フニーバオバブの観察会が4回開催されました。その際に御参加いただいた方から質問をいただきました。「ランは種子ではなく株を分けて増殖するのですね?」と尋ねられました。「何れでも増殖可能ですが、通常ランの種子繁殖はびんなどに入れて、無菌状態で培地を寒天にして栽培します。」と詳しくお話ししました。

そしてハンカチノキに着生させたフウランまでご案内しました。丁度一年前に受粉したフウランの鞘が残っていました。そこには細かい埃のような種子が詰まっていました。この種子には養分的なものはなく菌の助けを借りて樹木の幹の上などで発芽、着生ランとして育ちます。樹木の幹にはシダなど特定の植物しか育ちませんが、ランも進化の過程でうまく生き残る術を取得しました。このような隙間を生物用語でニッチといいます。のちに経済用語化して宅配便、コンビニなど隙間でうまく登場したものにも「ニッチ産業」として用いられています。

フウランは日本、朝鮮半島、中国に自生、通常白の香りのよい花をつけます。突然変異により生じた斑入り葉、豆葉など葉芸の品種物を「富貴蘭」と名付け、江戸時代からもてはやされてきました。学名はNeofinetia falcataでしたが、2013年にVanda falcataに変更になりました。

3年前に大阪市内のおじいさんを亡くされた方からお電話を頂きました。管理ができないので当館で引き取りを希望されていました。

拝見させて貰うと、多くのランは弱り切っていましたが、日当たりに置かれていたフウランは水を貰っていなかったにもかかわらず元気そのものでした。この丈夫さは半端ではありません。着生なので自然でも水切れをおこすことがあります。ランの場合、根の組織の水分が80%以下になると、多糖類のペクチンが乾燥防止の膜を作ります。

前述のようにフウラン、富貴蘭の栽培は容易です。当館では7月には富貴蘭の花の展示会、そして10月には葉の芸を楽しむ芸術品の展示会を近畿風貴蘭会の皆様の手により開催されています。2016年は10月29、30日の開催となります。

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