名誉館長の部屋

身近にある毒

2016.12.06

11月30日午後、MBSテレビより電話をいただきました。「チョウセンアサガオの話しを聞きたいので中継車ですぐに向かいます」とのこと。何か事件がといぶかっていると記者、カメラ係など5名の方が到着、18時からの「VOICE」に反映させたいとのこと、早速近縁種のコダチチョウセンアサガオ(Brugmansia)の場所に向かいました。取材の事件は11月9日に姫路市の居酒屋で元店長(30歳)がアルバイト店員(20歳)の男子大学生の勤務態度に腹をたてたのがきっかけでした。学生用の食事にチョウセンアサガオの種子を混入しました。呼吸困難や吐き気を起こし緊急搬送され一週間入院の傷害事件に発展しました。幸いなことに現在は回復をしたそうです。元店員は薬物中毒による傷害の疑いで書類送検されました。取材はチョウセンアサガオの日本での栽培状況、入手、法規制、毒性などの情報収集でした。

翌日はABCテレビの「キャスト」も取材にみえました。

インド原産のチョウセンアサガオ(Datura metel)、北アメリカ原産のヨウシュチョウセンアサガオ(Datura stramonium)などが一年草の薬草、毒草として知られています。日本には前者は江戸時代、後者は1879年頃に渡来したとされます。最近は殆ど見かけませんが、十年以上前には道端など誰が植えたともなくチョウセンアサガオの花が夏〜秋に咲くのが見かけられました。全草にヒヨスチアミンなどの強いアルカロイドを含み、薬として利用する場合は鎮痛、喘息、腹痛などに効くそうです。華岡青洲は当時曼荼羅華(マンダラゲ)と呼ばれたチョウセンアサガオを利用、種子から麻酔薬をつくりました。母や妻が実験役に名乗り出てくれ、1804年に記録上世界で初めて全身麻酔に成功をしたそうです。その裏には母の死、妻の失明という大きな犠牲を伴いました。このように毒性の強い植物をゴボウと間違って食した中毒の記録は今迄にもありますが、悪意でまかない料理にいれて食べさせたとは同じ人類の仕業かと疑いたくなりますが、世の中これだけでは終わらないのです。

チョウセンアサガオの販売や栽培が禁止されているわけではなく、それを良い事に現在HP上には「幻覚 幻想 覚醒 神秘の世界にご案内 危険ドラッグの販売はしていません。幻覚を起こす植物の苗の販売です。マリファナなど薬物指定の植物は販売しません。葉っぱや根を乾燥させて吸ったりはしないで下さい。責任は持てません。1株3,000〜5,000円」チョウセンアサガオ 合法 マリファナの10倍の効果というふれこみで登場しています。

Datura
Brugmansia

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