名誉館長の部屋

恩を仇で返すユキモチソウたち

2017.03.15

サトイモ科のテンナンショウ類は山道をよく歩かれる方はヘビのような姿でよく観察されることでしょう。テンナンショウ属(Arisaema)は中国、日本を中心に約150種類が分布しています。アメリカではノースカロライナの山中で見かけましたが、Jack-in-the -Pulpitの英名で知られています。その語源ははっきりとしていません。ジャックの名は人名にも用いられますが、デビルの意味も持ちます。パルピットは牧師の意味があります。これだけをとらえるとやや怖い意味になります。世界的に山草愛好家に人気のあるテンナンショウ属としては四国や一部本州に自生するユキモチソウ(Arisaema sikokianum)があげられます。六甲山系でも見つかっています。徳島県の里山の林中、道端でも挨拶でもしているかのような姿で、あちこちで出迎えてくれます。あとはヒマラヤ山麓のアリサエマ・グリフィシー(A. griffithii)や雲南のアリサエマ・キャンディデシマ(A.candidissimum)の姿が印象的です。

この気品のあるユキモチソウをはじめこの仲間は、球茎、塊根の栄養状況により花なし、雄株、雌株へと性転換をします。雌株が雄株にもなります。筒状の部分は仏炎苞と呼ばれ、花が咲くまで雌しべ雄しべなど花全体を保護しています。雪や餅に見える部分は附属体と呼ばれ、昆虫の道しるべになっている可能性があります。そして花は表からは見えにくい附属体の下部にあります。同じサトイモ科で言えばミズバショウの中心にある黄色い部分が花に当たります。花時にはハエなど小昆虫に魅力的な香りを出し、おびき寄せて花粉を運んで貰います。雄株の筒の中で花粉まみれになりますが、やがてすき間から脱出します。そして今度は雌株に向かい受粉という大切な仕事を手伝います。雌株にはハエの脱出できるすき間がありません。獲物を養分としていないので食虫植物ではありませんが、残酷な事に仕事をしたハエは筒の中で命を終えることとなります。実は温室内で閉鎖空間と思っていましたが、咲くやこの花館のユキモチソウでも同じことが起こっていました。

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    ユキモチソウ雄株ハエの仲間が

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    ユキモチソウ雄株

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    ユキモチソウ展示

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    ユキモチソウ雌株

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    徳島県の道端のユキモチソウ2016.5.7

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    徳島県の道端のユキモチソウ2016.5.7

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