名誉館長の部屋

大阪市で人と植物の国際学術シンポジウムが

2017.06.28

人と植物の共生―都市の未来を考える―

大阪市立大学が主になって、2017年6月10日に大阪市立大学、11日に大阪市立自然史博物館でシンポジウムが開催されました。大阪、東京のようなメガシティでも植物に助けて貰えるか国内外の緑の関係者で考えてみようというのが今回の開催のねらいでもあります。最近では工学の貢献によりメガシティでも一応は快適に過ごせますが、緑被率では両地ともに世界最下位、ヒートアイランド現象の深刻化など、生活環境はストレスにつながっていきます。グリーン、コモン、パークに溢れる、ロンドンとは様子が違います。私に与えられた話題提供は「植物の多様性:その重要さと都市部の植物園の役割」でした。自然豊かなシンガポールやインドネシアからの講師も参加されましたが、大阪の昔を見ると海だった部分もあり、自然も破壊され、まとめるのに困りそうでしたが大阪市からの要請もありスピーカーを引き受けました。今回のシンポジウムは基本が英語で、通訳が日本語にするという変則的なもの、スピーカーそして参加者の多くが日本人だっただけにやや不思議な雰囲気になりました。

(アブストラクトより)

植物の多様性:その重要さと都市部の植物園の役割   久山 敦

都市の場合、植物の多様性については、一旦、自然植生の破壊された土地に関して、生態的な事柄も含めて再現をするのは極めて困難である。現状を探ると多くの土地は、造園家、植木屋、趣味家などの思想や趣味で植栽が進められており、空き地には主に丈夫な外来植物が野生化しているのが一般的である。このような中にあって都市での植物園が啓蒙できる、推奨植物についても過去の自然植生というよりは、時代にあった人々に好まれる植物をとりあげるケースがほとんどである。咲くやこの花館では1990年に開催された花博の精神「人と緑の共生」をベースとして、世界の地域ごとの野生植物、植物の恵み、植物栽培の紹介などを通して、植物のそして自然の大切さ、「植物の多様性」などを入館者に知っていただくように推し進めている。植物と人のつながりを知るために、ハワイ、ブータン、オーストラリア、マダガスカル、英国などを選び、現地の人との交流やイベントを通じて現状を伝えている。そして日本の植物の紹介については、山野草の展示、販売などで、イカリソウ、フウラン、カンラン、シュンラン、ギボウシ、ヤマアジサイ、スミレなど身近な植物を通し「植物の多様性」の重要さについて親しみやすくしている。また、都市での植物の多様性を考慮して、耐寒性のある熱帯的な植物で構成されたトロピカルガーデン、夏季の乾燥にも向くメディタレニアンガーデン(地中海式気候庭園)、耐寒性のあるサボテン類やアガベ等の乾燥地植物で構成されたデザートガーデン、耐暑性のある山野草や草花で構成されたロックガーデンやイングリッシュガーデンも築造し、入館者の園芸、緑化に関してのサンプルとしている。そして都市での園芸に関して、導入植物のエスケープに配慮、また日本の野生種と交雑しない植物を紹介している。自然の恵み、「植物の多様性」は、十分に活用していく方向で活動している。         

The Indispensable Biodiversity : Responsibility of Botanic Garden In the City  Atsushi Kuyama

Concerning about the plants in the city and their biodiversity, some big problems arise with an ecological view point, if we think about the growing plants once being destroyed. Now we find the areas where landscape planners, gardeners and plant lovers are growing the plants with their own favor. And many naturalized plants are widely found in the wasteland. Besides that, botanic gardens tend to recommend the people to grow the popular plants, not the plants of original native vegetation. Sakuya Konohana Kan、Botanic Garden、definitely keeps the spirit of International Garden and Greenery Exposition(Expo 1990), “The Harmonious Co-Existence Between People and Greenery.” The nature, biodiversity and the gift from the nature are the most indispensable to life.

 Sakuya Konohana Kan keeps the plants from tropical area, dry area, alpine area, Antarctic and Arctic zones, and picks several places in the world for checking their character of nature. They are Hawaii, Bhutan, Australia, Madagascar, UK and so on. Their native and introduced plants have been displayed along with the study of their ethnobotany and problems. On our domestic plants, visitors could botanize Japanese plants in alpine house and rock garden. In the exhibitions and events they could also find the native plants such as Epimedium, Vanda fulcata, Cymbidium goeringii, Cym.kanran, Hosta, Hydrangea and Viola. As the sample of biodiversity in the city, several small gardens are prepared. They are “Tropical Garden” for growing hardy tropical like plants such as palms and Platycerium, “Mediterranean Garden” for dry tolerant plants such as olive and tamarisk, “Desert Garden” for hardy and dry tolerant plants such as cacti and Agave, “Rock Garden and English garden for heat tolerant wild plants such as Scabiosa and Geranium. Sakuya Konohana Kan would recommend the cities to grow the plants that should not escape to the nature from where they are certainly chosen and planted, and not to grow the plants which might be hybridized with our native plants.

海外からのスピーカーとも交流がもてたのはラッキーでした。インドネシアのジャワ島のボゴール植物園園長のDidk Widyatmoko氏は以前にはジャワ島でも標高の高い場所に位置する分園のチボタス植物園園長もされていたそうです。植物園の背後にある3000m余りのパングランゴ山にはチボタス植物園の植物担当者2人に案内して貰ったことがあるだけに話は途絶えません。この山は赤道に近い高い山で寒くも暑くもなくプリムラ、デンドロビウム、ロードデンドロンが一緒に見られ、しかも一斉に開花をしません。羨ましいと話をすると、5℃まで下がり大変寒いと言われる。熱帯の人には5℃は寒いのだろう、確かに登山の際に現地の同行者も寒がっていたのを思い出しました。彼はインドネシアの植物の多様性を紹介されました。イタリアのパドヴァには欧州最古の大学のひとつがあります。1222年の創設でダンテやペトラルガなどが学んだそうです。パドヴァの植物園は欧州最古の植物園で、1545年創立、最初は修道院の所有でのちに大学に移管されました。若い頃に一度訪ねたことがあります。遺跡よりは新しいが時が止まったような園内は7月とあってセミの大合唱、近年訪ねたトリノの植物園も同じような古さを誇っていました。ここからはパドヴァ大学の教授で植物園園長のBarbara Baldanさんが来日され、彼女の植物園の歴史や役割を話されました。植物園の中にはいると古に植栽された植物もあり、時代を忘れそうになります。紹介されたひとつに1585年植栽のチャボトウジュロがありました。なかなか成長をしないので有名で、咲くやこの花館でも池のふちにも植え込みました。最近ではパドヴァ植物園は植物地理学的に植栽が行われていて、各地域の植物の多様性を紹介しています。またシードバンクなども備えられています。

両日とも150人余りの熱心な参加者があり、シンポジウムは有意義に終了しました。

 

 

 

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