名誉館長の部屋

見事に咲いたフウランとナゴラン

2017.07.08

今年も恒例の花季の富貴蘭展が始まりました。
数多くの丹精込めて作られてきたものばかりです。
私が半放置状態にしている百株余りの鉢植えや樹木に着生させているものと比較すると一目瞭然です。
十分に愛情を注いで施設内で栽培をすると自生地以上に美しく育つものです。
ワイルドな風景は咲くやこの花館高山植物室外側のハンカチノキに着生状態で見られます。

当館のハンカチノキに着生のフウラン
フウラン
主に島根県産フウランの展示

香りについて

フウランとナゴランで何れも寄贈を受けたものです。フウランは夜行性のスズメガが香りに誘われてやって来たのでしょう。昨年種子を付けた証拠の莢が残っています。

夜になると香りを増すのは夜行性の花粉媒介者を引き付けるためですが、その成分については親しく交流をしている国立科学博物館の筑波実験植物園の遊川知久氏が、カネボウ化粧品と共同で調べられています。氏は実験植物園で多数の野生ランを栽培、ランの分類に強く、時折新種を見つけられています。また台湾の野生植物やランなどを当館に頂戴したり、栽培技術交流なども行っています。

その報告ではスズランの香りのリナロール、フルーティーな香りのメチルベンゾエート、爽やかな香りのシスー3、チグレートが含まれているそうです。受粉が終わると、呼び込みも不要で香りもなくなります。
アングレクム・セスキペダレと呼ばれる白い花を当館では春に咲かせるマダガスカルの着生ランの香りを思いだします。
蜜をためる距の長さが30cm以上あり、ダーウインがこのランには必ず口吻の長い蛾が存在するはずだと予言、彼の死後口吻の長いキサントパンスズメガが見つかったのは生物界ではあまりにも有名な話です。

この花にはメチルベンゾエート、ベンジルアルコールが含まれフウランに似た香りが漂います。また、私の家では暑い時期にスイカズラやテイカカズラが咲きますが、夜帰宅をするといつもフウランが咲いているかのような錯覚に陥ります。実はスイカズラのにおいの成分にもリナロール、シスー3といったフウランと共通のもの、そしてヘキセノール、ゲラニオイル、フェニルエチルアルコール、ジャスミニラクトンが含まれていることが分かりました。

化学が分からなくても鼻は意外と正確に香りを判断しています。

島根県産フウラン
最近では海外の種類との人工交配も、ただし番付にはのらない。
人工交配品

花蓮展について

一方、7月23日迄の開催の花蓮展、6月24日からの早朝観覧は終了いたしましたが、こちらの方は700名近い皆様に早朝開園をお楽しみいただきました。7月7日現在でもまだ黄色い花のアメリカの野生ハスなどにも蕾があります開催中の食虫植物展などと合わせてお楽しみ下さい。

人工交配品

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