カカオとコーヒー展が始まりました。バレンタインデーを前に、百貨店のチョコレートの特設売り場などでは、美術館のようなな雰囲気を醸し出します。関係者の熱のいれようにはただならぬものがあります。そもそも何がきっかけでこの習慣が始まったのか、1932年神戸トアロードに店を構えていたモロゾフが、バレンタインデーにチョコレートを贈るスタイルを日本で初めて紹介したそうです。以降そのルーツの場面でもあるイタリアのローマの北に位置するウンブリア地方のバレンチナ教会での出来事にはさほど触れることもなく、「チョコレートを女性が男性に贈る」が独り歩き、1958年にメリーチョコレートカンパニーが狭い範囲でバレンタインチョコを販売、1960年に森永が新聞、テレビ、雑誌で大々的に紹介、それが現在に続いているそうです。
咲くやこの花館では、チョコレートの原料メキシコ原産のカカオノキに遡ります。たわわに実るカカオノキ(アオイ科、旧:アオギリ科)や、同じ嗜好品であるコーヒーノキ(アカネ科)を4種ご覧いただいています。そしてその製造過程やカカオビーンズ、カカオマス、カカオバターなどをご覧いただけますし、一日3回のライブショーでは解説のほかに原料のニブス、少し変わったチョコの試食もあります。
直径10mm程度の小さな白い花を咲かせるカカオノキは、通常体長1~数ミリのヌカカ(糠蚊)の助けで受粉します。ヌカカは日本でも見られ、蚊と同様にメスが吸血します。しかし2日目までかゆみや腫れもなくヌカカとは気づかないそうで蚊より厄介です。咲くやこの花館では以前は人工授粉を行っていましたが、最近では放置状態でも結実、アリが観察されています。株により実付きにバラツキがあります。温度、光など状況が良くても結実が少なかったり、その逆もあります。数カ月で果実は大きく育ち、色づくと収穫します。ヌルっとしたパルプをつけたまま菌を利用して発酵させます。この発酵が大切で初めてチョコレートの味のあるカカオビーンズになります。ビーンズ(豆)は皮(ハスク)とニブスに分けられ、ニブスから夾雑物を除きカカオマスが作られます。その後は図のようにして普通のチョコレート、ホワイトチョコレート、ココアになります。普通のチョコレートとホワイトチョコレートは全く別物で、カカオの油分であるカカオバターでできたのがホワイトチョコレートです。カカオの生産量(2008-9年)を英国王立キュー植物園では子供にも分かりやすい表現をしています。「351万5千トンで、英国の2階建てバスを並べると英国の長さの3倍分になる重さ」で、植物の種子の重さとは思えない量です。更に驚かされるのが、インドネシアでのミスです。国別カカオビーンズ生産量(2011年)1位はコートジボアール約155万トン、2位はインドネシアとガーナで各約70万トンと発表されています。日本へのカカオビーンズ輸入量(2013年)はガーナからが80.6%、インドネシア0.3%で不思議な数字になっています。インドネシア産は低品質だったからで相手にされなかったのです。京都の会社が調査した結果、発酵をさせておらず、その方法すらわからない状態で70万トンもの生産にはびっくりです。メキシコやグアテマラでは紀元前400年ころからマヤによるプランテーションが始まっているのに。現在京都の会社ではインドネシアで商品価値をあげるため「可哀そうだからのフェアートレードではなく」、「生産者の自立で価値ある作物」への応援で「発酵」を推し進めています。
東京都のカカオノキからmade in Tokyoのチョコ作りも話題です。東京都小笠原母島の熱帯域でカカオノキが栽培がされ、問い合わせると1,2年後にはできる様子です。
自然界ではカカオポッドはパルプ部分が甘いのでサルや大きなネズミの仲間のアグーチが食し、大切なビーンズは苦くて口を付けずに、ばら撒かれ、うまく親株から離れた場所で発芽することとなります。