館長の部屋

巨大なニューフェース パロボラッチョ!

2018.04.24

数カ月前に、旧知の温室等の製造会社の、渡辺パイプの田井信幸さまから電話をいただきました。早い機会にお会いしたいとのお話でした。その内容は、丹波篠山の工場の庭に、巨大なオリーブを栽培、公開されているワコーパレットの代表取締役の羽山謙造さまが、巨木がお好きで、これまた西畠清順さんが導入したパロボラッチョ(スペイン語palo borracho トックリキワタの仲間)を、「多くの方に親しんでいただけるようなら、提供しても良いが」との有難いメッセージでした。昨年、宇部市ときわミュージアムのリニューアルの際に、パロボラッチョ、ボトルツリー、バオバブなどの巨木を、市民の方々の寄贈により、西畠氏から届けられる話をうかがって間もない頃でした。羽山社長はスケールの大きな方で、まさかの巨木を、咲くやこの花館へと、道を開いていただけました。当館では花のよく咲く別種のパロボラッチョ(ケイバ・スペキオサCeiba speciosa)の大木を育てています。南米原産ですが雨の多い沖縄育ちで、さほど太ってはいません。

4月23日(月)朝、ついに池田市の「そら植物園」からパロボラッチョ(ケイバ・インシグニスCeiba insignis)が咲くやこの花館に到着しました。約3トンのヘビーな木は、専門家の手で熱帯花木室に、カニクレーンなどを駆使して植え付けもスムーズに行われました。前回、オーストラリアから輸入されたボトルツリー、1トン半の搬入時の大変さを思い出しました。当時はカニクレーンのような便利な機械は使えなく時代の移り変わりも感じさせられました。

今回のアルゼンチンからのパロボラッチョは、前回ご紹介した、宇部市ときわミュージアムのパロボラッチョと兄弟分で、日本へは飛行機で運ばれました。日本には2014年に到着、現在直径が約1.5mあります。この太さは乾燥の凄さを物がたります。ボトルツリー同様に、若いうちは幹の緑の部分で光合成作用ができます。

咲くやこの花館に導入されたボトルツリー、バオバブなどと同様に用土もない状態、所謂ベアールートで輸入されました。ことに乾燥地の植物は、乾燥状態を維持させて移動をすれば、1ケ月以上を要する船便でも枯死する可能性は低いものです。

地球の裏側から大温室に

<今回寄贈いただいたパロボラッチョ(トックリキワタの仲間) 

         ケイバ・インシグニスCeiba insignisとは> 

ケイバ・インシグニスは南米のコロンビアからアルゼンチンに分布しています。寄贈いただいた株はボリビアに近いアルゼンチンの乾期のある林で見つけられたもので, 2014年10月に成田に到着しました。NHKの現地取材もあり「NHKスペシャル」で2015年3月19日に放映されました。幹の太さが迫ってきて、親しみというよりは異次元の世界に引き込まれます。現在ケイバ属(Genus Ceiba)は17種に分類されていますが、その不思議な形状から自生地で生活をしていたマヤの人たちには天と地中をつなぐ植物として特別扱いされてきました。しかし、現在ではプランテーションの範囲が広がり経済活動のために伐採が進んでいる話も現地から伝わってきます。

ケイバはパンヤ科に属していましたが、現在はDNAによる、APG分類体系によりハイビスカスなどと同じアオイ科に移っています。学名はCeiba insignis  (旧名:Chorisia insignis)です。パロボラッチョpalo borrachoはケイバ類の総称として使われ、分類の体系とは異なって名づけられています。パロボラッチョはスペイン語で「酔っ払いの木」を意味します。語源の一説には、アルゼンチン北部の先住民が、ケイバの材のお椀で発酵させてお酒をつくったというのがあります。お酒好きの肥満の説もあり真相は不明です。

インシグニスはスペキオサと異なり、より太りやすい体質をもっています。また寒さにもやや強いです。そして花は径約10cm、5弁、クリーム~黄色で冬の夕刻に咲きます。花にはコウモリなど夜行性生物が訪れ、花粉を運搬します。17種のケイバ属の内7種類は近縁関係にあり種間交雑します。すぐ近くで栽培しているスペキオサ(トックリキワタ)も近縁で花粉を貰うと雑種ができる可能性があります。インシグニスもウリのような形の果実が結実後、莢がはじけると繊維に包まれた種子は飛んでいきます。原産地では繊維は収穫されマットレスなどに詰められます。材はコルクの代用や樽、製紙などにも利用されます。また、盆栽~大木と観賞用にも栽培もされます。

沖縄や九州でも栽培されており、アケボノキワタの名前が使われているケースもあります。高さ15mにもなります。今回植え付けた株は運搬などのこともあり高さ5m程度ですが、何度も剪定されて高さは抑えられています。幹の太さは現在1.5mですが、最大直径2mにもなるそうです。

 

宝物の扱いは慎重にベテランの手で
大型クレーンもここまで台車に積み替え
3トンの植物を台車に乗せて重機で引っ張る

咲くやの住民に

4時間で到着
根鉢は殆どありません、
過湿にならないように発根を促します。

トックリキワタ

<古くから栽培しているパロ ボラッチョ(トックリキワタ  ケイバ・スペキオサ)とは>学名はCeiba speciosa(旧名:Chorisia speciosa)で、英名はsilk floss tree(繭綿の木の意味)、日本ではトックリキワタや南洋桜と呼ばれます。スペイン語では同じくパラボラッチョです。原産地はアルゼンチン、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、ブラジル南部などです。耐寒温度は0℃、一度根づくとかなりの乾燥にも耐えます。沖縄のように雨の多い場所で育てると、あまり太くなりません。幹の低い所には刺があり、生き物が登りにくい構造になっています。古株になると刺がおちていきます。刺なしの園芸品種もあり「マジェスティック ビューティ」の名で知られています。

樹高は約20m、当館での開花は10~12月です。現地では乾期に落葉し、その後葉のないまま花だけを付けます。これはジャカランダなどと同様の開花パターンです。花は濃いピンクで、基部は黄色または白色で個体差があります。花は現地では昆虫、ハチドリなどにより受粉、他家受粉をすると長さ20cmほどの果実を付けます。最初は緑色ですが、やがてグレイに変化します。果実は破裂して、中から繊維が種子とともに飛び出ます。自然では風により種子は繊維と共に親株から離れた場所に飛ばされます。これにより親株との光の取り合いなどの不具合を取り除きます。種子は油分を含み浮く性質があるので、発泡スチロールが登場するまではライフジャケット、そしてクッションに使われてきました。

当館で開館当時から栽培しているケイバ・スペキオサは南米原産で沖縄での栽培品を導入したもので、余り花も咲かない株でした。35年前淡路ファームパーク勤務時にも植えましたが、この時もあまり花は咲きませんでした。しかも、一株では結実もしません。そこで、当時の職員であった齋藤敦子さんが沖縄で良く咲く株の枝を入手、クローンの違うものを持ち帰り、担当の山本一広さんが15cmほどの穂を接いでいきました。その努力は報いられ、今では少しタイプの違う花が無数に着き、しかもクローンが違うので、沢山果実もつき、やがて莢は破裂します。見捨てられそうになっていたパラボラッチョは一躍スターの座に上り詰めたのです。今回、ニューフェースのパラボラッチョが注目の的になるのはは間違いはないでしょうが、先輩が淋しい思いをするといけないので、もうひとつのスターもとりあげました。

トックリキワタの花
トックリキワタの果実
トックリキワタの種子と繊維

有難うございました

咲くやこの花館は、多くの方の植物や資料などの寄贈、そして知識や技術などのサポートにより運営がなりたっています。今回の、巨大植物のご寄贈も、大阪市の植物園そしてミュージアムの価値を高め、地元のみならず、世界中から訪問される皆様にも末永く親しまれる宝物となるでしょう。羽山謙造様、西畠清順様率いる「そら植物園」そして関係者の皆様に厚くお礼を申し上げます。

寄贈:㈱ワコーパレット→詳しくはこちら

 

監修:そら植物園㈱→詳しくはこちら

当館栽培棟のマンゴの前で羽山謙造様(左)、西畠清順様

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