館長の部屋

メタリックグリーンの花の美しいアンデスのパイナップル科植物

2018.05.28

プヤ・アルペストリス(Puya alpestris)が少しブルーを帯びたメタリックグリーンの花をまだ咲かせています。

5年ぶりに4花茎に花を着けています。長さ4cmほどのやや肉厚の花は黄色の雄しべとのコントラストがお洒落で、中米、南米に分布する200種を超えるプヤ(属)の中でも目立った存在です。英名は「サファイアタワー」、日本ではヒスイランの名で呼ばれることもあります。そして蜜は花を下向きにすると流れ落ちるほど多く、現地ではハチドリが飛来、食堂となります。そしてそのお礼は花粉を他の株へ配達することです。日本ではメジロなどが蜜を吸いに来そうですが気づいていないようで、アリがせっせと通っています。自生地はチリの標高2000m辺りで、南半球とあって10-12月に開花します。パイナップル科に属しているだけに一度開花した株には再度花は着けないで、横に殖えた株があれば次はそちらに花を着けますが、プヤ・ライモンディ(Puya raimondii)のように一回結実性で子株もなく、100年以上かかり開花、一生を終える種類もあります。本種は交野市私市にある大阪市立大学理学部附属植物園がアメリカの大学より1950年に導入した種子から育てられたもので、1990年花博開催前に増殖株が咲くやこの花館に移植されました。プヤの仲間はメガネグマ(Tremarctos ornatus)がカギ型の痛い刺をも気にせずに蜜や植物体を口にするそうですが、現地の人はこの刺には快く思っていません。山野草栽培の世界でもプヤの小型種が加わることがありますが、私も近くに寄る度に刺で傷をしました。狭い場所では長く育てる気持ちが徐々に削がれていきます。因みに「プヤ」の語源はインデアンの言葉で「尖った」で、意味する花序だけではなく葉先、刺と全て尖っています。

前述のプヤ・ライモンディ、世界最大の高山植物として有名で、アンデスの4000m以上の荒地に見られ、枯れる前に白い美しい花を着けます。実はこの貴重な植物標本、1990年の花博時にボリビアから展示品として持ち込まれ、終了後は当館展示室でご覧いただいています。 開花時の美しさはありませんが、高さ5mの標本は、数年前に東京上野の国立科学博物館での展示に加えられたこともあります。本種はNHK番組「ダーウインが来た」でペルーと日本の植物研究者と共同で、調査、取材に当たられたことがあります。高さ10m近い開花予定の株を切り倒しての調査結果では茎に100kg近い澱粉が含まれていることが判明しました。

2018.5.27(写真)

 

学名が学者、関係者を悩ませたプヤ・アルペストリス

以前はプヤ・ベルテロニアナ(Puya berteroniana)の学名が世界中で使われていました。咲くやこの花館のパンフレットも、現在ベルテロニアナのままです。分類が変更になったのを気づいたのは、国立科学博物館の筑波実験植物園の前園長岩科司氏からメールを貰った際のことでした。「昨年大阪市立大学植物園が担当で日本植物園協会の総会が大阪で開催されましたが、最終日の植物園見学で、市大の植物園で開花中のプヤ・アルペストリスの花を貰い調査しました。グリーンの花の色素はどうも未知のものらしい、咲くやこの花館にはないか、ほかではどこにあるだろうか?」との質問状でした。一瞬、ベルテロニアナが浮かび、何かあったに違いないと、チリの植物学者の論文をHPで探し出しました。英文で、ベルテロニアナhas been most problematic species of the genus in Chile(Smith & Looser,1935; Gourlay,1952 )「ベルテロニアナはチリ産プヤ属中もっとも厄介な種」と問題児扱いを長年にわたりされていたのです。この研究発表ではx berteroniana とx(交配)の表示がついていました。要約するとベルテロニアナは偶然に出現した自然交雑種で、パリにある標本と後日見つかった株が重要な役割をしました。種子もできなく、現在自生地もない、ベルテロニアナは植物体自体が大きいのがアルペストリスとの違いでした。

植物の名前が、学名、和名、属名などで間違っているケースがあります。もっとも多いのが同定間違いです。名札の間違いは、SNSで広がり孫引きのような形でどんどんと広がるケースがあり怖いものです。今回のプヤもベルテロニアナの名で広がってしまっています。不注意の場合もありますが、時代の流れで分類が変わることもあり、種々の事情で混乱を招いている例が少なくありません。

今迄、当館でプヤ・ベルテロニアナの名で写真を撮影された皆さまは、プヤ・アルペストリスに訂正していただけたらと思います。

 

 

花の中には蜜が一杯
蜜に向かってアリがウロウロ
鋭い刺によく引っかかる

プヤの姿

プヤ。アルペストリス VS ヒスイカズラ
2018.5.20花は花茎側から先の方に順に咲きます
プヤ・ライモンディは世界最大の高山植物(当館標本)

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