プヤ・アルペストリス(Puya alpestris)が少しブルーを帯びたメタリックグリーンの花をまだ咲かせています。
5年ぶりに4花茎に花を着けています。長さ4cmほどのやや肉厚の花は黄色の雄しべとのコントラストがお洒落で、中米、南米に分布する200種を超えるプヤ(属)の中でも目立った存在です。英名は「サファイアタワー」、日本ではヒスイランの名で呼ばれることもあります。そして蜜は花を下向きにすると流れ落ちるほど多く、現地ではハチドリが飛来、食堂となります。そしてそのお礼は花粉を他の株へ配達することです。日本ではメジロなどが蜜を吸いに来そうですが気づいていないようで、アリがせっせと通っています。自生地はチリの標高2000m辺りで、南半球とあって10-12月に開花します。パイナップル科に属しているだけに一度開花した株には再度花は着けないで、横に殖えた株があれば次はそちらに花を着けますが、プヤ・ライモンディ(Puya raimondii)のように一回結実性で子株もなく、100年以上かかり開花、一生を終える種類もあります。本種は交野市私市にある大阪市立大学理学部附属植物園がアメリカの大学より1950年に導入した種子から育てられたもので、1990年花博開催前に増殖株が咲くやこの花館に移植されました。プヤの仲間はメガネグマ(Tremarctos ornatus)がカギ型の痛い刺をも気にせずに蜜や植物体を口にするそうですが、現地の人はこの刺には快く思っていません。山野草栽培の世界でもプヤの小型種が加わることがありますが、私も近くに寄る度に刺で傷をしました。狭い場所では長く育てる気持ちが徐々に削がれていきます。因みに「プヤ」の語源はインデアンの言葉で「尖った」で、意味する花序だけではなく葉先、刺と全て尖っています。
前述のプヤ・ライモンディ、世界最大の高山植物として有名で、アンデスの4000m以上の荒地に見られ、枯れる前に白い美しい花を着けます。実はこの貴重な植物標本、1990年の花博時にボリビアから展示品として持ち込まれ、終了後は当館展示室でご覧いただいています。 開花時の美しさはありませんが、高さ5mの標本は、数年前に東京上野の国立科学博物館での展示に加えられたこともあります。本種はNHK番組「ダーウインが来た」でペルーと日本の植物研究者と共同で、調査、取材に当たられたことがあります。高さ10m近い開花予定の株を切り倒しての調査結果では茎に100kg近い澱粉が含まれていることが判明しました。
2018.5.27(写真)