名誉館長の部屋

ちょっと気になる植物たち

2019.07.02

暑さに弱い食虫植物コブラリリー(Darlingtonia californica)

暑さに弱い食虫植物コブラリリー(Darlingtonia californica

アメリカの西部、カリフォルニアやオレゴンの山地で冷水の流れる辺りに育つコブラリリーは食虫植物好きな方には興味深い種類ですが、夏暑くなる場所での栽培は試してみましたが不可能でした。幸い当館では適温の高山植物室があるので元気に育つ様子を観察いただけます。食虫植物としては捕虫の様子が少し変わっていて、頭状の捕虫袋の下部にチャップリンのちょび髭のような飾りを持ち、昆虫を引き付けるのでしょうか、袋の下部にある開口部から虫などが袋に入ります。袋の上部が半透明で明るく虫はそちらに向かい逃げようとしますが出口はなく、力尽きた生き物は筒状の捕虫袋に落ち込み、最終的には肥料になります。植物の進化に感心させられる場面です。

冷涼地を好む食虫植物
コブラリリー

怖い食虫植物

一方栽培が易しいだけではなく、植物体の破片が落ちただけでも生育、大繁殖をする怖い食虫植物も見られます。オオバナイトタヌキモで、南北アメリカ、アフリカに見られ1cmほどのかけらが水がめに残っていても、短時間で他の水草を寄せ付けないほど繁茂します。現在特定外来生物に指定されていませんが、タカサゴユリなどとともに放置すると取り返しのつかないことになりそうです。話はそれますが、今は栽培、譲渡、販売禁止の指定を受けているボタンウキクサ(ウオーターレタス)は、以前淀川の支流の大川に上流から次々と流されてくるのをJRの環状線の桜ノ宮で通勤の途上気がついていました。東京のTV局が淀川のボタンウキクサの被害を取材するのでコメントがほしいというので出かけてみると、採取されたボタンウキクサがエンドレスのようにダンプカーに積まれていく処分の現場でした。水槽か池で小規模に楽しまれていた水草が逸出した恐ろしい結果を目前に、言葉を失いました。オオバナイトタヌキモと同じ仲間の可愛らしい食虫植物、ウサギゴケは少し暑さに弱い性質で、今のところ日本の自然に影響がないと考えられますが、涼しい気候のニュージーランドでは前記の2種はペストとされ栽培、取引が禁止されています。

咲くやこの花館では7月2日~9月23日まで食虫植物展を大々的に開催します。大切な地球に問題のない姿で、多種類の食虫植物の観察をしていただき、楽しみ~学び~育てるなどのためのライブ、ワークショップ、販売なども行います。ぜひご参加下さい。

 

オオバナイトタヌキモ
オオバナイトタヌキモの捕虫袋
2019年 虫を食べる植物展 始まりました。

元気に育つパロボラッチョ

5月に新芽を吹いたアケボノキワタ(パロボラッチョの一種 Ceiba insignis)は葉を沢山つけ、定植されてから1年を無事に迎えることができました。

ところで今年も日本植物園協会の大会・総会等が5月23-25日に仙台の東北大学などのご尽力により開催されました。日本各地から55植物園148会員が参加、各植物園などの活動ぶりが発表会、ポスターなどで紹介されました。当館は近年催し物などで取り入れているライブなど身近で植物の大切さを知って頂く企画や、多くの皆さまに技術的なものをはじめご協力をいただいている状況に関して「咲くやスタイル」と称してポスターで発表させていただきました。

初日に開催された意見交換会では、昨年に続き日本植物園協会総裁の秋篠宮皇嗣殿下とパロボラッチョの話ができました。昨年は時間が余りなく、後ろ髪をひかれる思いで退席され、何かあるのかと気になっていました。今回、殿下は笑顔で、これを見て下さいと話されてきました。何とスマホの画面に浮かび上がったのは少し丸みを帯びたパロボラッチョで、お庭の温室前に植わっていました。太い木が大好きでと言うことでパラグアイから最近導入されたそうです。パラグアイ産は丸みを帯び、咲くやこの花館などのアルゼンチン産はトックリ型をしていて形が違うのではとも話されています。そして当館のものや宇部市のときわミュージアムのアケボノキワタは花色や開花時間などから自然交雑品と私どもは考えていることを告げると、殿下も自然交雑の可能性についても言及されてきて話はつきないような状況になりました。当館を終の棲家としている遠来のパロボラッチョの一種アケボノキワタを皆さまも見守ってやって下さい。

ケイバ・インシグニス(パロボラッチョの一種)

マカを栽培展示しています。

1990年鶴見緑地で開催された花博、「水の館」のペルーの展示コーナーでは、ジャガイモ、カボチャ、トマトなどの重要な野菜がペルー原産であることをアピールしました。また、門外不出といわれていたマカも紹介されました。日本ではじめての事でした。アブラナ科に属し、アンデスの標高4000m付近に自生、栽培されている植物で、根が野菜や薬に、葉は動物の餌などにされるそうです。根には炭水化物、タンパク質、アミノ酸類が豊富だそうです。薬効は疲労回復、若返り、精力増強、更年期障害や婦人病などにも効くそうです。外貨を稼ぐものの少ないペルーにとっては宝物、お得意先はアメリカ、中国、日本の順で、1990年以降売上はうなぎ上りに、2014年には28億円以上になったそうです。

高山植物室で栽培していますが、根は大根のような形をした不思議な姿です。

 

マカ

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