「植物でたどるクリスマス」が始まっています。クリスマスの起源でもあるイエスキリストのベツレヘムでの生誕は、聖書の記述などによります。植物の側からたぐれば、その背後には冬至祭などイエス誕生以前からある民俗信仰が見え隠れします。生誕のお祝いに三人の賢者が持参した3種の宝物のうちモツヤク(没薬)、ニュウコウ(乳香)は、紀元前6000年頃の古代エジプトでは神に捧げられていたようです。
2019.12.13
「植物でたどるクリスマス」が始まっています。クリスマスの起源でもあるイエスキリストのベツレヘムでの生誕は、聖書の記述などによります。植物の側からたぐれば、その背後には冬至祭などイエス誕生以前からある民俗信仰が見え隠れします。生誕のお祝いに三人の賢者が持参した3種の宝物のうちモツヤク(没薬)、ニュウコウ(乳香)は、紀元前6000年頃の古代エジプトでは神に捧げられていたようです。
ニュウコウ(乳香)もモツヤク (没薬)もカンラン科(キャベツを甘藍、東洋ランに寒蘭がありますがここでは関係ありません)の植物の樹脂で、ソマリア辺りからアフリカの中部にかけて、またインドの乾燥地に多種類が見られます。ニュウコジュ、モツヤクジュを傷つけると樹脂が出てきます。その樹脂をとる権利を保障されているのが地元のベドウィン族です。昔は運搬も困難という事から「黄金」並みの価値とされていました。これらの樹脂は今もカトリック教会,コプト教会、ギリシャ正教会などで焚かれ、祈りが煙と共に天にのぼると信じられています。 モツヤクジュの樹脂の没薬はオリーブ油と混ぜてミイラに塗って使われたことでも有名です。
クリスマスが出番のモミ、トウヒは古代の樹木信仰で冬至の魔除けとして家に飾られ、古代ローマではセイヨウヒイラギが豊神祭で使われ、ヤドリギは北欧神話で宿主の樹木と共に崇められ、古くからの信仰の対象となってきたものとキリスト教やイベント的なものが入り交じり現在まで続いてきたと言えるようです。
一方ポインセチアは原産地のメキシコからアメリカに伝わり、クリスマスカラーの赤い苞と緑の葉が美しく、戦後に苞を幅広く見栄え良く、寒さで葉が振るわないようにするなど改良され広がりました。今では日本で育種されたサントリー育種のプリンセチアがアメリカに紹介されるようにもなりました。これは別種のユーホルビアを改良したものです。クリスマスデコレーションは現在では海外からの輸入が多いですが、終戦から1971年のオイルショック迄はmade in occupied Japanやmade in Japanで神戸が世界一の輸出量を誇っていたそうです。一方サンタクロースは1930年以降コカコーラのコマーシャルで有名になったそうだが、日本ではそれ以前の1872年(明治25年)に築地の教会に侍姿のサンタが、1878年の日曜学校の教材には今のサンタに近い三太(田)九郎が登場しています。遡ると4世紀頃の、現在のトルコの司教、教父聖ニコラウス(ニコラオス)の伝説が起源といわれれます。
またサンタクロースがいそうな北欧にはサンタは存在しない、昔スウェーデンを訪れた時に驚かされたのがクリスマスにはこびとのトムテが登場することでした。スウェーデンではクリスマスにケルトの影響でツリーに動物の肉を生贄として下げました。近年は麦藁の動物などに代わっています。妖精トムテはデンマークやノルウエーではニッセ、ノームと呼んでいます。
当館ではクリスマスにまつわる種々の植物そしてスウェーデン、ドイツ、ハワイ、メキシコのツリーをはじめ、乳香、没薬紹介のライブやマリヤも口にしていたと言われるデーツ、つまりナツメヤシのドライフルーツの試食などもあります。(1日3回)、そしてクリスマスの謎がとけるクリスマスラリーも楽しめます。期間中は北欧の軽食やドリンクも楽しめます。また、ワークショップ、クリスマスコンサートが楽しめる日もあります。植物が人の営みと共に利用されてきた軌跡を辿っていただけたらと思います。