2019.02.22
咲くやこの花館で初めての催し物「Popなきのこ展」(2019年1月12日~27日)に、13,451名(昨年同期4、615名)の皆様にご来館いただきました。有難うございます。この催し物は多くのきのこ関係者のご協力によるもので、催しが始まるや来年もの話が耳に入ってきました。
菌類や自然史洋書通信販売の佐野書店の皆さんは、国内外のきのこの書籍やきのこグッズを展示販売されました。時間帯によっては店に近寄れないほどの人気で、佐野さんご夫妻は東京上野の国立科学博物館での出店を思い出し、ここでも同様の賑わいだと驚かれていました。佐野氏の奥様にお聞きすると、きのこ人気は数年前の百貨店での催しが炎上のはじまりだそうです。確かにきのこデザインのグッズや絵などの展示販売会が大阪でも開かれています。変形菌に魅せられ56歳で会社を早期希望退職され書店を立ち上げられた佐野悦三氏はこだわりで価値のある書籍しか扱わないと奥様は話されます。有難い話です。
生きたきのこ展示としては、きのこリウムをgracilis-worksの樋口和智氏により展示して貰いました。美しい緑の中のヌメリスギタケ、エノキタケ、ナメコなどのきのこは魅力的でした。室内が12℃程度の涼しい状態での展示でした。 1/12~1/14, 1/26,27には「きのこリウムフォトスポット!」を、丁度スマホで撮影すると、人ときのこが一体化して写る新企画で、撮影された写真は楽しい思い出になったことでしょう。ワークショップのきのこリウム作りも大人気で、80名の方に参加いただきましたが、満席でご希望に添えなかった方には申し訳ありませんでした。講師は岡村真史氏、樋口和智氏で菌床は森産業の提供でした。平素からご協力いただいている宝塚市山本の陽春園植物場でも近年苔テラリウムそしてパルダリウムと称する熱帯の植物などをアクリルケースで楽しむ室内型の園芸にも力を入れてられますが、土地がなくても楽しめる、苔やきのこに人気があるのがよく分かりました。
能勢みどりすとクラブによる「原木に自分で菌を打ってしいたけを育ててみよう!」も好評で、種駒を打つ音がにぎやかでした。
光るきのこ(ヤコウタケ)は三重県岩出菌学研究所にご協力いただきましたが、温度の高い環境に適し、期間中はご覧いただけませんでした。別の機会にご紹介したいと思います。
船坂農園のご厚意で運び込まれたしいたけの榾木(ほだぎ、ほたぎ)は、寒い場所では動きがなく心配をしていましたが、温室内に展示すると見ている間にしいたけの姿が現れ日毎に大きく育つのが観察できました。
きのこ標本など展示品としては千葉県立中央博物館、兵庫県立人と自然の博物館、大阪市立自然史博物館等からお借りしました。また兵庫県立御影高等学校環境科学部生物班では環境科学部の顧問を務める河合祐介主幹教諭の指導の元、現在10名の部員で六甲山のきのこの多様性を調査、標本作成や生態分析を紹介してられます。きのこにはタグをつけ、学校で冷凍、業者にフリーズドライ加工をしてもらった後、湿気を防ぐため表面に樹脂を塗り、プラスチックケースに入れて保存と独特な手法で600種類にも及ぶ標本を作られています。この力作も展示させて貰いました。
日本冬虫夏草の会の元奈良県農業技術センター環境保全担当主任研究員の荒井滋氏は奥様の悦子さんと調査や標本作りを、額に収められた冬虫夏草の標本は昆虫部分と共に理想的に配され、採取の記載もあり感激の声と共に注目されていました。
「冬虫夏草菌に感染した昆虫は、腐敗菌に侵されず、アリなどの他の昆虫に食害されることもなく、そのままの姿で残っています。冬虫夏草から、他の菌や昆虫を寄せ付けない、何らかの抗菌物質や昆虫忌避物質が産生されていることが容易に想像されます。今後、さらに研究が進めば、冬虫夏草が産生する生理活性物質を利用することで、害虫や病原菌に対し効果的な農薬が開発される可能性があります。」と荒井氏は語られています。
きのこは柔らかいために分解が早く化石としては殆ど残りません。神戸市須磨区名谷の中新世(約2,300万年前から約500万年前までの期間)の地層から1982年新種として見つかったサルノコシカケ科Parapolyporites japonicaは一点だけの化石標本です。国立科学博物館筑波実験植物園より矢部淳氏にお持ちいただきました。氏は新生代を中心とした植物化石の分類と植物の化石に基づいた過去の気候解析を行っておられます。
変形菌等の動画を期間中御覧いただきましたがミュージアムパーク茨城県自然博物館のご協力によります。
フラワーホールをきのこの世界そのものにしてくれたのは「きのこオブジェ」です。ウレタンの素晴らしい作品で鳥取県立博物館にご協力いただきました。鳥取から駆けつけて下さった、主任学芸員の清末幸久氏のお話では、同博物館では全作品を一緒に展示することもないとのこと、オブジェ同士が親睦会を開けそうな雰囲気でした。
日本の植物界の偉人ときのこの関わりを紹介するために、 南方熊楠顕彰館より熊楠さんのデスマスク、高知県立牧野植物園より牧野富太郎氏が植物画を描く際に使用されたパレットや絵具などもお借りしました。
きのこの写真、500枚にも及ぶ世界のきのこ切手やきのこの本などは飯沢耕太郎氏、きのこグッズはとよ田キノ子さん、堀博美さんのコレクションでした。私もおよそ500枚のきのこ切手を国別に、額に入れさせて貰いましたが、日本の切手で同定できるきのこは「しいたけ」くらいしかありません。プリザーブドフラワーのきのこは(一財)ユニバーサルデザイナーズ協会 寺下 由紀江さんの作品でした。
咲くや塾は大阪市立自然史博物館の佐久間大輔氏が「きのこ初めの一歩~明日からはじめるきのこ的生活~」のテーマでお話をされました。菌でもきのこは大型の子実体(傘、胞子のはいるひだ、柄で構成される)を持つ種類の呼称で、普通の菌には子実体がなく「かび」のようなものが多いなどと、基本的な分かりやすいお話に、102名と満員のサロンはきのこ三昧状態になりました。
日本きのこ女子サミットは 1月13日(日)に開催されました。栽培、研究、イベント、デザイン、絵本等のきのこの分野で活躍する三女子、原田 栄津子さん(岩出菌学研究所、きのこ栽培・研究)、堀 博美さん(きのこライター)、クラドメタケさん(きのこ芸人)によるサミットは大阪芸術大学客員教授 飯沢耕太郎氏(写真評論家・きのこ文学研究家)の司会で進行されました。きのこ談義は日本各地で探されてきた不思議な、珍しいきのこの写真で紹介しながらの充実の90分でした。
1月27日はしいたけ音頭組合、きのこ芸人の方々などのしいたけ音頭&ダンスの世界でした。
株式会社バイオコスモによるきのこ展示販売も好評でした。山伏茸は中国では四大山海の珍味の一つとされ、宮廷料理用の食材として珍重されたと言います。 たもぎ茸は老化防止や癌抑制、美容効果など売りだしています。このような珍しいきのこも扱われました。
カフェではきのこフェアと称し三重県岩出菌学研究所提供のオオイチョウタケとコプリーヌのメニューにも挑戦されました。料理名人の越中香緒里さんは醤油からオリーブ味に切り替えてとても美味しいきのこ料理を作られました。
大阪自然史センター「はくラボ」の植物関係の古書やきのこグッズ販売、きのこの工芸品、作品はAjuの横山亜樹子さん、オガサワラミチ、けさらんうさらん、morino-zakka,など、錫匠の中元 司氏は錫製のきのこなど。その他神戸市立森林植物園、東京都夢の島熱帯植物館、兵庫きのこ研究会、株式会社 明治、イオンモール鶴見緑地などの皆さまにも御協力をいただきました。
きのこスープ、ポルチーニアイスの試食もあり、きのこのあらゆる楽しみ方を実現できました。
当館の岡内美紀主任を中心に企画を進めてきた催し物、かつて無かったほど多くの方々のサポートにより、第一回目のきのこの展示会は無事終了いたしました。咲くやこの花館からお世話になった皆様に厚くお礼を申し上げます。