館長の部屋

咲くやこの花館に「蘭花譜」が

2019.03.15

現在、当館の展示室にてご覧いただいている、ランの花の版画ですが、4月4日には終了を迎えます。(株)智光の萩原俊彦会長には大切な版画を快く展示に使わせていただき、感謝いたします。

大阪の実業家加賀正太郎氏のランへの熱意が、大正時代から日本でのラン栽培の礎を築かれたわけですが、芸術の世界をも巻き込んで制作されたランの版画、その源流をたどると想像を絶する、最高の技術での和紙づくりから、原画制作、彫師、刷り師との連携、日本の誇る作品です。大阪の植物園としては何とか所有しておくべきではないか、200~300組作られ、和紙なので300年、保存状態では更に何百年もと思いつつ、その道が開けるだろうとひそかに思っていました。

年を重ねると、物の寿命が気になり始めます。英国王立キュー植物園の大温室パームハウスは1848年に建築、150年後に同じ姿の大温室を立て直しました。植物に関してはシクラメンでもうまく育てると150年は生きるし、キソウテンガイはナミブ砂漠でのC14(放射性炭素年代測定)の調査で2000年の株があるとされています。咲くやこの花館の、ベルリンの植物園の株に次いで大きいとされるものは約60年生きてきたわけで、計算上ではまだ1900年以上生きることになります。以前テレビ番組「よーいドン」でこの株を紹介した時に、タレントさんが、「こんなにも長生きしたくないなあ、ほんまに生きるのに飽きてしまう。」と、確かにキソウテンガイはある意味可哀そうな生き物かもしれません。

世の中のものが風化したり、時代にあわなくなり消えていく中で、大切な記録に和紙を使用しているものは、消えゆくものの中では隙間になっています。「蘭花譜」もそのひとつだったのです。

3月初めに、咲くやこの花館の事務所に、「蘭花譜」のことでお電話をいただきました。「今からでも来て貰えないでしょうか?」、「今日は理事会があるので、3日後にお伺いしますので」と小寺みづえ様にお伝えしました。お訪ねすると、蘭花譜の箱が乾燥をしている場所に保存されていました。お話をうかがうと、みづえ様はラン愛好家で庭の温室でカトレアなどを栽培されていたそうです。御主人の小寺太平氏は大阪市立大学病院の整形外科のお医者さんで、1年半前に逝去されましたが、咲くやこの花館には洋ラン展の度にお二人でご来館いただいていたそうです。「蘭花譜」が将来粗末な扱いを受けないかとても心配なので、ぜひ持って帰って下さいとお申し出をいただきました。「思い出の植物園に貰われ、主人も喜んでいることでしょう」と、小寺みづえ様のご厚意で咲くやこの花館に持ち帰らせていただきました。今後大切に保存しながら、みなさんに御覧いただきたいと思います。

 

「蘭花譜」

大切にされていた版画と小寺みづえ様
Zygopetalum gautieri ブラジル原産
Epidendrum falcatumメキシコ原産

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