館長の部屋

出番を失った料理バナナ

2020.05.01

人類に幸せを三倍体バナナ

新型コロナウイルスの影響で臨時休館中ですが、本来なら4月25日~5月6日は「熱帯フルーツ展」を開催していました。咲くやこの花館で実らせたマンゴー、ジャボチカバ、バナナ、ピタンガ(タチバナアデク)などをご覧いただきながら、料理バナナ(plantain)を油で揚げる、焼く、でお楽しみいただく手筈でした。今年は幸い料理バナナの「カルダバ」がフィリピンより特注で調達ができるというので日本に向かっていましたが、残念なことになりました。次回をお楽しみに。

料理バナナは日本では馴染みがありませんが、加熱すると芋のような味になり主食になるので熱帯圏では屋台などで売られ一般的です。ただバナナより保存性の優れているコメやタピオカの収穫ができる地域では主食にはなりません。生産量は生食用が約9581万トン、料理用が3581万トンと2009年には発表されています。バナナの原産地はマレー半島と推測されていますが、野生のものは種子だらけで鳥などの餌となり種子はまき散らされます。そのために分布地では山中に点々と実生株が見られます。今日本に輸入されている主なる品種のキャベンディシュMusa acuminata ‘Cavendish’ は二倍体AAの原種Musa acuminataとは異なり、AAAの同質三倍体で種なしで大きくなる食用には優れた性質を持っています。(バナナの話題についてはこの欄の2019.4.29にも記しています。)

 

バナナの花は赤紫の苞に護られ、一房分だけ苞の落下とともに現れる。雌花である程度果実ができ始めると次の苞が落下し何段ものバナナができる。
料理バナナは緑の状態の硬い果実を切って揚げたり、焼いたりして食べる。品種はカルダバ、他品種ではあくが出てべたべたになるが、何れも加工をすると芋の味で主食にもできる。
試食の状況 油で揚げたもの、焼いたものの2種 2019年

バナナのたたき売り

ところで、バナナのたたき売りはよく知られていますが、発祥地は門司だそうです。2013年の当館での熱帯フルーツ展の際には会場を賑わしました。たたき売りは台湾が日本の統治時代の1902年(明治35年)に、基隆から門司に運ばれた頃に始まったそうです。またバナナの中に食べごろのものがあり、いち早く門司などで売りさばかれたそうです。

 

 

門司では今も伝統をまもってたたき売りのデモンストレーションがされている。
フルーツ展のバナナ2018年
料理バナナの品種「リンキッド」緑の間は全房が塊になり手では房ごとに分けれない。

バナナが簡単に食べれなかった時代も

日本では安価な食物の代表バナナですが、終戦直後には夢の食物に昇格しました。(果物の定義は木本、野菜は草本とされており、厳密にはバナナは草本で少し変ですが野菜になります。)

歴史を紐解くと、日清戦争(1895年明治28年)後日本が統治する台湾の総督府の管理下、日本向けバナナの改良などが行われたそうです。1915年には25万籠(1籠32~41kg)、1922年には130万籠以上に、1925年には台湾青果荷受組合が東京、横浜、阪神、下関、門司に設立されました。価格は東京神田の青果市場では450g(4本余)が6~10銭(卵が10個17銭)でバナナ1本が卵1ケ程度で買いやすい価格でした。人気のバナナは1937年には最多の313万籠に、第二次世界大戦直前の1941年(昭和16年)でも152万籠が輸入されました。1945年の終戦時にはほぼ途絶状態になりました。戦後のバナナ輸入再開は在日華僑の手で、1949年10月頃に米軍納入用のバナナ取引で始まりました。そして米軍納入の際の余剰が日本人向けに市場に出すのは許されました。その際の卸値が1kg(8本程度)1000円以上、小売りの価格はその倍近かったと言われています。当時の平均月収が9867円なので、1本約250円は非常に高価なものの代表になりました。(2019年現在1本50円前後、平均月収36万円、月収中央値30万円)

バナナの生産量の多いのはインド2910万トン、中国1330万トンで、日本の主なる輸入先のフィリピンは580万トンと少なめです。インド、中国は人口も多く国内での消費で終わっているのが現状だそうです。みんなに愛されるフルーツ(一部野菜も含む)は、他の商品同様に安くて良いものを世界中から探し消費者につなげる、その背後には様々なストリーが見いだされます。

咲くやこの花館では、通常展示の中でも果物類が結実した際には紹介させていただいています。フラワーツアーの際に館で実った完熟バナナなどの試食の機会もあります。こちらの方もご利用下さい。

 

 

無限花序で1房毎にまとまり花をつけるが、雌花だけで、雄花に入れ替わると軸以外何も残らない。
屋台の果物屋ではバナナの房をぶら下げて販売(メキシコトルーカ)
シンガポールでも果物屋ではバナナを吊り下げて販売

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