名誉館長の部屋

ハンカチノキの独特な香りには意味があった。

2020.05.08

頑張ってるハンカチノキ

咲くやこの花館のGWは静かなうちに終わってしまいました。誰にも見られないで花をつけ、散ってしまう残念な状態が続いています。頑張ってハンカチを沢山つけているハンカチノキをはじめ館内外の状況をお伝えします。

 

ハンカチノキの葉からの香りは独特で、ガス漏れと間違えるとか臭いとか苦情に近い話が出て折角の珍しい樹木が切られてしまう話が各地にあります。その成分は調査がされています。葉を傷つけないようにフラスコに入れ密閉、放出される揮発成分をSPME方式で確認します。この方式はガスクロマトグラフィーにより成分を分析する方法で、環境、食品、医薬品、香料の試験に使われます。これによると、多くの植物に含まれる青くさみのcis-3-ヘキセノール(青葉アルコール)、強い若葉の香りの酢酸cis-3-ヘキセニル、リンゴに近い香りのtrans-2-ヘキセノールなどの青葉アルコール類が抽出されたそうです。青葉アルコール(leaf alcohol)の代表は緑茶の香り成分です。前述の成分のひとつひとつはガス漏れには思えません。しかし合わさると若い人には嫌われる香りになります。(年を重ねるにつれて良い香りと感じる傾向がありますが。)また、この香りの成分にアレロパシー(allelopathy)という他の植物の生長を抑える作用の可能性があり調査がされています。酢酸cis-3-ヘキセニルの香りがホワイトクローバーの幼苗の生育に顕著な抑制力があるのが分かりました。アレロパシーはヒガンバナ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、針葉樹などにもあり、光の取り合い競争を避けるために他種や時には子孫までも寄せ付けない物質を出します。ハンカチノキの香りは、子供たちを寄せ付けないのが目的ではなく、他の植物を寄せ付けないのが目的でした。

 

400枚ものハンカチが下がるハンカチノキ
ハンカチノキの香りには他の植物を寄せつけない力が
ロックガーデンではセンダイハギ(Thermopsis lupinoides)の仲間でアメリカ産のサーモプシス・モンタナ(T.montana)が開花中

話題豊富なハンカチノキ

1995年4月に「中国はなづくし」という催し物をフラワーホールで行いました。中国の沿岸部からチベットに至る、野生植物、園芸植物の展示を大々的に行いました。その際に高さ3m程度の鉢植えのハンカチノキを関東地方で探し入手、珍しい樹木として紹介しました。催し物終了後、冷房のある高山植物室に植え付けました。2,3年たった春にとんでもない光景が見られるようになったのです。高山植物室の自動扉が開く、子供たちが引き込まれるように入るや否や、「クサー」の大声、瞬時に後ずさりをする姿がしばしば見られるようになりました。

 

これがもとで、ハンカチノキは高山植物室の外の露地に追いだされる運命になりました。それからは根も自由に張れる、さほど暑くもない条件でどんどん成長をしていきました。次に大きく育ちすぎる心配が出てきました。白い苞が光の良く当たる上部につき近くで見にくくなるのです。剪定すれば良いのでしょうが、日本への導入当初に剪定すると枝枯れをする情報を得ていましたので、栽培担当者にはくれぐれも切りまくらないようにと伝えていました。その後どうしても切らねばならない部分がでてきました。案の定その枝は枯れてしまいました。なかなか問題のある植物ですが、話題も豊富な植物です。今年は400以上苞がぶら下がり、今迄になく白いハンカチまみれになり多くの方に見ていただきたい状態ですが。残念の一言に尽きます。

チューリップの野生種でウズベキスタン原産のツリパ・クルシアナ・クリサンタ(Tulipa clusiana var.chrysantha)の結実、スイセンのように分球をしないので種子から8年以上育てて開花させます。
サガリバナ(Barringtonia racemosa)に蕾が、1花序だけですが。
キダチチョウセナサガオ(Brugmansia)の花も目立つ

季節と共に

オーストラリア東部原産のドリアンデス科のガイメアリリー(Dryanthes excels)に4花茎も、花茎は長いと5mにもなるそうです。オーストラリア展で切り花で輸入をしたことが、2m余りの花に1.5万圓を払い異様な姿で持ち帰る。
ディギタリス(Digitalis)やデルフィニウム(Delphinium)も開花が始まる
プリムラ・クンゲンシス(Primula chungensis)は四川、雲南のサクラソウ

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