名誉館長の部屋

アリ植物展示 ~8月2日 食虫植物展示~9月2日

2020.07.29

食虫植物は光合成ができるものの、やせ地に生え養分補給に生き物を誘い、捕まえ、消化するのが一般的な姿です。一方、食虫植物の花は受粉をして結実するのに虫などの助けを借ります。虫は他の花の花粉の運び屋として活躍、蜜をお礼に貰うことが多いようです。これは共生関係になり、食虫植物の殆どの花が虫を捕らえる罠とは離れた場所にあるのは、捕虫と受粉の虫の使い分けで進化をしたのでしょう。普通の植物の花の位置とは違い思いっきり花茎を伸ばし、「そんなに茎を伸ばして大丈夫?」と声をかけたくなるほどです。(食虫植物の共生について7月27日に産経新聞の取材がありました。)

 

アリ植物展

共生

ところで共生というのは生物界では重要な関係になりますが、アリは親子が一緒に生活をする亜社会性昆虫として有名です。アリに幼虫時代に育てて貰うキマダラルリツバメと言った小型のシジミチョウ科の蝶は興味を深く、小学生の頃には京都のお寺の境内などにも出かけました。アリは世界全体で1万種以上、日本で280種も見られ、興味深い行動をします。アリはミツバチの祖先から分化していると遺伝子解析で推定されています。一方シロアリはアリと似た生活をしていますが、全く別物でゴキブリ類になるそうです。そういえば熱帯での分解者として一番の働き手であるのはシロアリで、ゴキブリも熱帯の林に殆どの種類が見られ(家の中に住む種類は約4000種の内1%と言われる。)同様の生活をしており一連の昆虫であることが分かります。

アリの活躍には目を見張るものがあり、日本ではスミレ、イカリソウ、カタクリ、セツブンソウ、海外ではシクラメンなどの種子にはエライオソームという糖分などの附属物がついています。これを食するアリは種子を運搬、重い種子の植物は移動が難しいが、石垣や舗装の隙間にスミレが見られるのはアリ便によるもので手数料はエライオソーム払いになります。

 

各種アリ植物
<アリノスシダ>Lecanopteris pumilaマレー半島
<アリノスダマ>Hydrophytum fomicarum タイ

アリ植物展

アリ植物  展示~8月2日

このように暗躍しているアリが多い中、アリに住まいを提供、一方ガードマンとして葉などを食害する生き物からの襲撃に備えている用心深い植物も熱帯圏を中心に見られます。昔からアフリカのアリアカシアと呼ばれる樹木が有名でしたが、最近では家ででも栽培できるタイプの狭義のアリ植物に人気が出てきています。

当館でも10年以上前から狭義のアリ植物を栽培、食虫植物展の際には解説ボード付きでご覧いただいたことがあります。今回はアリ植物の専門家伊藤蟻植物農園の伊藤彰洋氏が世界各地から調査、導入、育苗されてきたアリ植物をご覧いただけます。自生地そして栽培による観察の機会を豊富に持たれてきた伊藤氏による展示に伴う解説も貴重な情報です。アカネ科、ガガイモ科、ラン科、シダ類ウラボシ科など分類上も幅広い多種類のアリ植物はなかなかご覧いただけません。ぜひ不思議な姿の植物をフラワーホール、高山植物室でお楽しみください。最終日は8月2日(日)です。この日には伊藤氏の育てやすいアリ植物、そして奥様作のトートーバッグ、キーリング、ステッカーなども販売されます。

 

<アリノスダマの仲間アカネ科><Hydrophytum sp.
<アリノスダマの仲間アカネ科>Hydrophytum caminiferum
<アリノスダマの仲間アカネ科>Hydrophytum

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