名誉館長の部屋

謹賀新年

2021.12.31

今年も咲くやこの花館を宜しくお願い致します。

 2021年、咲くやこの花館では多くのサポートの方々のご協力により、楽しめる、学べる植物園としてご利用をいただきました。コロナの影響により「こけ展」、「クリスマスローズ等展」が終了後の4月下旬~6月中旬に休館に追い込まれました。催し物関係の方々には残念な、申し訳ない期間でした。「刺激スパイス展」は新規に立ち上げができました。2021年12月から2022年にかけて開催の「POPなきのこ展」も新たなるファンの方にもご利用いただいています。最近では観賞用にえのきたけ等がガラス容器内で苔と共に育てられます。このような魅力あふれるきのこの世界を博物館、グッズ制作、販売そしてきのこ愛好の関係者のお力添えで楽しく体感していただけます。また変形菌(粘菌)や冬虫夏草の紹介も行っています。きのこの子実体は興味深い姿をしていますが、本体の部分でもある菌は見えにくい世界ですが、地球環境に重要な役割や影響を与え、避けては通れません。(関連記事:当ブログ2020,1.4「大人気のきのこ展」、2020.4.26「ウイルスの悩み」)

 

POPなきのこ展は2022年1月23日まで
苔の培地に菌を、そしてきのこを楽しむ。短期間だが菌の子実体のきのこが見られる。
チベットのミラ峠、標高5100mで少年は冬虫夏草を採集していた。チベット人の数少ない現金収入となる。

地球環境問題を考える

 2021年7月にはNPOボルネオ保全トラスト・ジャパン理事の池田泰子さん(嵯峨美術大学 教授)により熱帯雨林のジオラマ模型づくりが開催されました。9月には咲くや塾~特別編としてBotanist社と共同で「未来につなげる緑のバトン」という名称で環境破壊が進む中、私たちは「植物に育てられる」でワークショップを開催しました。外部でも秋に開催の箕面市主催のシニア塾、豊中市主催の「みどりのフォーラム2021」でも「植物に育てられる」の要素を含めて講習会を開催しました。2022年3月に開催予定の西宮市の緑の講座や兵庫県フラワー装飾技能工会の勉強会でも、「地球を使わせて貰う人類のあり方、他の生物に対する配慮を土台に、植物に育てて貰いながら、植物を楽しむ」内容にしていきます。

 

ボルネオの自然そして現状を知る池田泰子さんによるジオラマづくり。
館内でボルネオの自然への危機を訴える.
写真家横塚眞己人氏によるボルネオの自然と保護の話 2018年

ボルネオでの取り組み

 NPOボルネオ保全トラスト・ジャパンでは「残された熱帯雨林を保護し、生物多様性を保全すること。動物と人間の関係を損なう問題を解決すること。いのちをつなぐ社会のあり方について考え、伝えていくこと。」を事業として①熱帯雨林の所有者からの土地購入、②ゾウのエサ供給支援およびスタッフ人件費支援、サイチョウ類の繁殖促進活動および生態調査、➂講演会、セミナー、イベント出展や自然環境保護・生物多様性保全活動における環境教育や啓発活動をされています。同会と当館は➂の部分で動いています。私たちも、地球を地球やそこに住む生物に十分配慮して生活をしていきたいものです。同NPOの会報が2021年末に発行されました。その中にメッセージを依頼されました。拙文を抜粋、転載させて貰います。同会では事業を進めるために会員の募集もされています。(関連記事:2019.8.2「ボルネオの自然そして現状を知ろう」、2019.10.8「植物そして自然の大切さ」)

 

NPOボルネオ保全トラスト・ジャパン会報「ボルネオの風」Vol.20(2021年12月) 熱帯雨林とは  <久山 敦>

 熱帯(多)雨林は東南アジア、中部アフリカ、中南米などの熱帯に位置し、年間を通して温暖であること、年降水量が2000mm以上あることなどが条件である。熱帯雨林はその特徴として、生物の多様性が挙げられる。全世界の約5%の面積に、生物種の半数以上が分布していると考えられている。また、生物に必要な酸素も、約40%が熱帯雨林により供給されている。(中略)重要なのは土壌部分だ。落葉落枝(リター)は、気温が高くシロアリや微生物などにより短時間で分解される。また多雨により養分が溶脱、やせた酸性土壌となる。熱帯雨林の土壌、その実態は意外に脆いものである。薄い土壌は一度伐採などで植生の破壊を行うと、その土壌を雨が流し、強光は砂漠化を招くのである。土壌の薄さは板根で高木を支えるという進化を遂げた。また、菌根菌とも密接な関係がある。葉の美しいヤシ科のヨハネステイジスマニア・アルティフロンスはボルネオにも産する植物で、15年ほど前に持ち帰ったがしばらくすると枯れてしまった。菌との共生が必要だったのだ。サラソウジュ(ショレア・ロブスタ)はお釈迦様が入滅の際に咲いたというインド産の植物だ。本種はフタバガキ科に属すが、これは菌との共生に成功、再度入手したヨハネステイジスマニアと共に咲くやこの花館では定着するようになった。フタバガキ科植物などの周りにある菌根菌はリン酸や窒素を吸収、それをフタバガキ科植物に与える。その代わりフタバガキ科植物は光合成で得た炭素化合物を菌に与える。このような微妙な共生関係で生きる植物、繊細な姿で生き続けている。(中略)オランウータンの好物のドリアンは、19種中14種も自生、遺伝子に変異のある株の自生地も大切にしたい。150種も自生するフィカス(イチジク属)の果実も野生生物の生活には欠かせない。食虫植物のネペンテスも種類が多く、捕虫袋のふたの下に牙をもつネペンテス・ビカルカラタ、捕虫袋に白いリングのはいるネ・アルボマルギナタ、キナバル山系の標高1500~2500mに自生する大きな捕虫袋のネ・ラジャなど枚挙にいとまがない。寄生植物のラフレシアもボルネオ島で有名だが、その寄主のブドウ科のテトラスティグマを育て、5mmほどの種子を地面上のつるに植え付けたこともあるが、人工ではなかなか成功しない。「ゾウなどが脚にラフレシアの種子をつけ、テトラスティグマを踏むと傷がつき、それが寄生を助ける。」との説もある。分からないことが多く、保全や保護に結び付く地道な活動が望まれる。また見逃せないのが、森林開発に伴う埋蔵している泥炭の分解や火災による炭酸ガス、メタンガス放出で、環境保全が急がれる。1950年代からのチェンソーやキャタピラトラクターの利用、アブラヤシなどの大規模なプランテーションは、古くより伝わる焼き畑のような土地の利用法とは違い、短期間で砂漠化を招く。南洋材、アブラヤシの油、バナナ、カカオなどはその栽培現場が見えない状態のまま世界各地で使われる。我々も、何の罪悪感もなく使ってしまう。英国キュー植物園の園長だったG.T.プランス卿は、咲くやこの花館に2度訪ねてくださった。熱帯植物が専門である。プランス卿曰く、「アマゾンの植物調査中にスリナムで、博士論文のテーマでもあったクリソパラヌス科リカニア属の30mの高木を見つけた。嬉しさのあまり、ジュカ族に切り倒しを頼むと『神様を怒らせる』ときっぱりと断られた。最後は切ってくれたが、『伐採を命じた白人に罰が!』と祈りながら作業を。」この心はボルネオの住民にも同じように存在するが、諸事情で消されている。1904年、英国のW.H.ハドソンが筆を執った小説“Green Mansions”『緑の館』の熱帯の自然への警鐘も生かされていない。一息入れ・・・、開発を続けていくとどうなるか?地球を大切に使わせて貰う工夫をあらゆる方面から各自が進めていくしかない。

ボルネオやマレー半島に自生しているラン科のリンコスティリス・ギガンテア
フォトグラファーの阿部雄介氏の写真展「生命の楽園ボルネオ」ボルネオの熱帯雨林には約15000種の植物、約220種の哺乳類、約680種の鳥類、無数の昆虫が 2019年
劇団シンデレラ(愛知県一宮市)によるボルネオの自然保護の劇 2018年

開花状況(2021年12月27日)

南米原産のカトレアに近縁のレリア・アンケプスは着生ラン。
ニンファエア・ロツス 北東アフリカ、西アジア原産、ナイル川にも自生、前1213年没のラメセス2世の棺には本種の絵が。
カエンボク(アフリカンチューリップツリー)はアフリカ原産、目立つ花を着ける。

2022年も楽しい夢のある企画でお待ちしています。

クリスマスローズ、原種シクラメン、山野草販売会 2022年2月25日~27日、

横山直樹氏作出のヘレボルス・チベティカとの交配品「吉野」
スペインなどで野生品の見られる、クリスマスローズの仲間のヘレボルス・フォエティドゥス
ヘレボルスの園芸品種

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