咲くやトピックス

組織培養でよみがえったギンケンソウ

2026.04.01

 1990年の国際花と緑の博覧会開催時に国際庭園(ハワイ州)でギンケンソウの花が展示され、大きな話題となりました。

 この植物は花が咲くと枯れる一回結実性の多年草で、また、自家不和合性で、別の個体の花粉がないと結実しないため、繁殖が困難です。

 当館では、1991年に播種した株が 2007年に、1993年に播種した株が2006年に開花し、その後枯れています。現在、ハワイからの植物の導入は難しく、 2024年9月に最後の個体が枯死して以降展示できない状態となっていました。

 ところが、2008年3月に組織培養を依頼したギンケンソウの培養株が、継続して千葉大学三位研究室で保存していただいていることが分かり、2024年にこれを元に新たに株の育成を依頼し、2025年より再度展示できる運びとなりました。

 ギンケンソウは、高山性の植物であるため、温度や湿度の管理が難しく、栽培には冷房設備が必要です。種子繁殖も、新たに導入することも難しい植物ですが、組織培養をすることにより、安定して保全することが可能であることが分かりました。組織培養は絶滅危惧植物の保存方法として、重要であることを改めて知ることとなりました。

ギンケンソウとは...

 ハワイ諸島の高山に分布する草本で、マウイ島の固有種とハワイ島の固有種の2亜種が存在します。当館のギンケンソウは、マウイ島固有種のArgyroxiphium sandwicense subsp. macrocephalumです。マウイ島ハレアカラ山に生育し、標高2100~3750mの荒原に生育します。開花時には、花軸が伸び、3mの高さまで伸びることがあります。長さ30~40cmの葉は剣状で硬く、絹毛におおわれて銀色に見えるため、ギリシャ語で「銀の剣」を意味する属名がついています。

 高山に生育するため、夜間にはきわめて寒冷になる厳しい環境のもとで、成長を十数年続けた後、6~9月に花軸を展開し、約1ヶ月後に花を咲かせます。開花後は、数カ月で枯死します。一般に長さが70〜250cmの総状花序には、直径3cmほどの頭花が 50~600個もつきます。

 ハワイ諸島にうまく定着して生育地を広げることできた植物で、特殊な生育地の環境に適応して、形態をすっかり変えて異なる生育場所に適応していった適応放散の王者とされています。

 ギンケンソウの仲間には、他にドゥバウティア属(Dubautia)、ウィルケシア属(Wilkesia)があります。北アメリカ起源の1つの祖先型から分化しています。

ギンケンソウの組織培養によるクローン増殖過程

※千葉大学三位研究室提供

 

①葉切片からのカルス形成

オーキシンとサイトカイニンを加えた培地上で葉の切片からカルスを誘導

 

②カルス増殖

カルスを様々な培地で継代培養しながら、その増殖や不定芽(不定胚)が分化する可能性を探る

 

③カルスからの不定芽分化

一部の培養条件で、カルスから不定芽(不定胚)が分化することを確認。分化能を維持したままこのカルスを増殖できれば苗の大量増殖ができる

 

④不定胚の形成も

分化する大半は不定芽(茎葉をもつ)だが、一部は不定胚(茎葉+根)と思われる構造が出現。不定胚はそのまま通常の受精胚と同じように発芽して植物体に。

 

⑤分化した不定芽の成長

分化した不定芽は水浸状の茎葉を持つ(膨潤化している)。

 

⑥膨潤化状態の苗が次第に正常な葉を形成するようになる。

 

⑦無菌培養状態の培養ビンから外に出して通常の栽培環境に移すためには発根させることが不可欠。

 

 

⑧地上部・地下部共に十分成長し順化可能な状態に。

咲くやこの花館での順化の様子

①到着した培養便

 

②瓶から出してポットに植え付ける。

 

③水槽の中に置き、温度湿度を制御して、萎れないように管理します。

 

(2025年9月)

④根も張ってきたので、水槽から出して、害虫を避けるために、網室の中で栽培。

 展示室に出すのを待った。

 

 

(2026年3月)

⑤現在の様子 ずいぶん大きくなりました。

 

咲くやこの花館 館長 城山 豊

一覧へ戻る

Guide map downloateted